消費者契約法に基づく取消し
消費者契約法とは
消費者契約法は、民法の規定よりも消費者を保護する範囲を広げたものです。
あくまでも消費者を保護するための法律ですので、たとえ個人でも「自らの事業として」または「自らの事業のために」契約の当事者になる場合は適用されません。
尚、事業者であっても、自らの事業に関係のない契約については消費者とされます。(判例)
消費者契約法に基づく消費者の権利
業者による次のような行為によって消費者が契約した場合、消費者契約法に基づいて契約を取り消すことができます。(法第4条)
不実告知
取引の「重要事項」について「事実と異なること」を告げる行為
断定的判断
物品、権利、役務その他契約の目的となるものについて、将来における価額や消費者が受けるべき金額、その他の「将来における変動が不確実な事項」について「断定的な判断を提供」する行為
不利益事実の不告知
取引の「重要事項」または「関連する事項」について、消費者の「利益となる旨を告げ」かつ「当該重要事項」について消費者の「不利益となる事実」を故意に告げない行為
不退去
消費者がその住居または業務を行っている場所から退去するよう意思表示をしたのに、退去しない場合
監禁
商品の購入などを勧誘されている場所で、消費者が退去したい旨の意思表示をしたのに、業者が退去させない場合
取り消しができる期間
契約を取り消すことができる権利は、、追認することができる時から6ヵ月または契約締結の時から5年を経過したときに時効によって消滅します。
契約条項の無効について
消費者が事業者と交わした契約に次のような条項があれば、その部分は無効となります。
債務不履行責任の免除
業者が債務不履行をした場合の責任を「全部免除」または「故意または重過失の場合に一部を免除」する条項
不法行為責任 の免除
業者が不法行為をした場合の責任を「全部免除」または「故意または重過失の場合に一部を免除」する条項
瑕疵担保責任の免除
業者の瑕疵担保責任を「全部免除」する条項
不当に高額な遅延損害金
消費者が商品等の対価の支払いを遅延した場合の違約金を定める条項で、年14,6%を超える部分
信義則違反
民法、商法等の規定に比べ消費者の権利を制限し、または、消費者の義務を加重する条項
取り消しの方法
業者に対する取り消し方法についての規定は特にありませんが、内容証明を利用して証拠として残すようにした方がよいでしょう。
特定商取引法との違い
消費者契約法には特定商取引法(特商法)のように取引についての指定がありません。消費者と事業者の契約すべてが対象です。
尚、特商法には、違反業者に対する「刑事罰」がありますが、消費者契約法には規定がありません。
消費者契約法の強み
業者の行為が明らかに詐欺であれば、民法ではなく消費者契約法に基づいて取り消すことをお勧めします。
消費者契約法では、原則として業者の「詐欺の意思(故意)」を消費者が立証する必要がないためです。
取り消し後
消費者契約法に基づいて契約を取り消した後は、業者と消費者それぞれが原状回復を行うことになります。
うまく進まない場合は、調停や裁判などによることとなります。