支払停止の抗弁とは
支払い停止の抗弁とは
物品の販売者に対して消費者が有している抗弁事由をクレジット会社等の金融機関に対しても主張することができる制度です。
抗弁の事由が解決するまで金融機関への支払いを停止できます。
支払停止の抗弁ができる取引
割賦販売法に基づいてクレジット会社などの金融機関に支払停止の抗弁ができる取引は、「ローン提携販売取引」と「信用購入あっせん取引」です。
割賦販売取引は、民法の「同時履行の抗弁」を主張して支払いを拒むことができます。
(民法533条)
各取引の内容は以下のようになります。
割賦販売取引
「割賦(かっぷ)」とは代金を分割で支払うことを意味します。
割賦販売取引とは、販売業者自らが消費者に対して信用を付与しクレジット契約を締結する取引のことで、消費者と販売業者の2者間取引です。
ローン提携販売取引
消費者が販売業者等の保証のもとに金融機関から融資を受け、それを商品の代金として販売業者に支払い、金融機関には分割して返済するものです。
消費者と販売業者そして金融機関による3者間取引です。
信用購入あっせん取引
消費者がクレジット会社と加盟店契約を結んだ販売業者から商品を購入すると、クレジット会社は販売業者に一括して商品代金を支払い、消費者はその代金を分割してクレジット会社に支払うものです。
消費者と販売業者そして金融機関による3者間取引です。
支払停止の抗弁が適用される要件
支払停止の抗弁をするには、次の要件が必要です。
信用購入あっせん取引またはローン提携販売取引によって
商品等を購入したこと
ローン提携販売取引は、法律で定められた商品、権利、役務であること
尚、信用購入あっせん取引は、権利のみ指定されています。
信用購入あっせん取引は、支払期間が2ヶ月を超える取引であること
ローン提携販売取引の場合は、支払期間が2か月以上で、かつ支払回数が3回以上であることが要件です。
分割手数料を加えた支払総額が4万円以上であること
リボルビングの場合は38,000円以上となります。
営業のために若しくは営業として契約するものではないこと
個人が連鎖販売取引や業務提供誘因販売取引で商品等を購入した場合は抗弁が可能です。
抗弁事由があること
抗弁の例
- 売買契約をクーリングオフした場合
- 売買契約が不成立の場合
- 商品の引き渡しや役務の提供がない場合
- 見本やカタログ等によって提示された商品と、現実に引き渡された商品が違う場合
- 商品に明らかな瑕疵がある場合
- 商品の引き渡しが遅れたため、購入の目的を達せられなかった場合
- 売買契約が錯誤や公序良俗に反し無効な場合
- 売買契約が詐欺や強迫、制限能力者を理由に取り消すことができる場合
- エステや語学教室などの特定継続的役務契約で、中途解約となった場合
抗弁の効果
正当な支払停止の抗弁がされると、販売業者との間に生じている問題が解決するまで支払いを停止できます。
あくまでも支払いを停止できるだけで、既払い金が戻ってくるわけではありませんし、将来の支払いが免除されるわけでもありません。
支払停止の抗弁方法
各クレジット会社で専用の用紙を用意している場合があります。
用紙が無いのであれば内容証明を利用します。
内容文書には契約内容を特定できるように、販売店の名称、所在地、電話番号、また、契約番号や代金を示し、「抗弁事由が消滅するまで支払いを止めます」などと記載します。
割賦販売法で指定されている商品、権利、役務について
割賦販売法が適用される商品等は、次のようになります。(割賦販売法施行令)
指定されている商品(別表第一)
- 動物及び植物の加工品(一般の飲食の用に供されないものに限る。)であつて、人が摂取するもの(医薬品を除く。)・・・健康食品
- 真珠並びに貴石及び半貴石
- 幅が十三センチメートル以上の織物
- 衣服(履物及び身の回り品を除く。)
- ネクタイ、マフラー、ハンドバック、かばん、傘、つえその他の身の回り品及び指輪、ネックレス、カフスボタンその他の装身具
- 履物
- 床敷物、カーテン、寝具、テーブル掛け及びタオルその他の繊維製家庭用品
- 家具及びついたて、びょうぶ、傘立て、金庫、ロッカーその他の装備品並びに家庭用洗濯用具、屋内装飾品その他の家庭用装置品(他の号に掲げるものを除く。)
- なべ、かま、湯沸かしその他の台所用具及び食卓用ナイフ、食器、魔法瓶その他の食卓用具
- 書籍
- ビラ、パンフレット、カタログその他これらに類する印刷物
- シャープペンシル、万年筆、ボールペン、インクスタンド、定規その他これらに類する事務用品
- 印章
- 太陽光発電装置その他の発電装置
- 電気ドリル、空気ハンマその他の動力付き手持ち工具
- ミシン及び手編み機械
- 農業用機械器具(農業用トラクターを除く。)及び林業用機械器具
- 農業用トラクター及び運搬用トラクター
- ひよう量二トン以下の台手動はかり、ひよう量百五十キログラム以下の指示はかり及び皿手動はかり
- 時計(船舶用時計、塔時計その他の特殊用途用の時計を除く。)
- 光学機械器具(写真機械器具、映画機械器具及び電子応用機械器具を除く。)
- 写真機械器具
- 映画機械器具(八ミリ用又は十六ミリ用のものに限る。)
- 事務用機械器具(電子応用機械器具を除く。)
- 物品の自動販売機
- 医療用機械器具
- はさみ、ナイフ、包丁その他の利器、のみ、かんな、のこぎりその他の工匠具及びつるはし、ショベル、スコップその他の手道具
- 浴槽、台所流し、便器その他の衛生器具(家庭用井戸ポンプを含む。)
- 浄水器
- レンジ、天火、こんろその他の料理用具及び火鉢、こたつ、ストーブその他の暖房用具(電気式のものを除く。)
- はん用電動機
- 家庭用電気機械器具
- 電球類及び照明器具
- 電話機及びファクシミリ
- インターホーン、ラジオ受信機、テレビジョン受信機及び録音機械器具、レコードプレーヤーその他の音声周波機械器具
- レコードプレーヤー用レコード及び磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物
- 自動車及び自動二輪車(原動機付き自転車を含む。)
- 自転車
- 運搬車(主として構内又は作業場において走行するものに限る。)、人力けん引車及び畜力車
- ボート、モーターボート及びヨット(運動用のものに限る。)
- パーソナルコンピュータ
- 網漁具、釣漁具及び漁綱
- 眼鏡及び補聴器
- 家庭用の電気治療器、磁気治療器及び医療用物質生成器
- コンドーム
- 化粧品
- 囲碁用具、将棋用具その他の室内娯楽用具
- おもちゃ及び人形
- 運動用具(他の号に掲げるものを除く。)
- 滑り台、ぶらんこ及び子供用車両
- 化粧用ブラシ及び化粧用セット
- かつら
- 喫煙具
- 楽器
指定さてている権利(別表第一の二)
- エステ
- 保養・スポーツ施設利用権
- 語学教室
- 家庭教師
- 学習塾
- パソコン教室
- 結婚相手紹介サービス
指定されている役務(別表第一の三)
- 1、エステ
- 2、保養・スポーツ施設利用権
- 3、家屋、門又は塀の修繕又は改良
- 4、語学教室
- 5、家庭教師
- 6、学習塾
- 7、パソコン教室
- 8、結婚相手紹介サービス
- 9、家屋における有害動物又は有害植物の防除
- 10、技芸又は知識の教授(上記4から7までを除きます)